愛媛大学沿岸環境科学研究センター 化学汚染・毒性解析部門:環境毒性学(岩田)研究室
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研究課題名: 化学物質による細胞内受容体―異物代謝酵素シグナル伝達系撹乱の感受性支配因子の解明
キーワード: トキシコロジー・感受性・リスク評価
研究代表者: 岩田 久人(愛媛大学 沿岸環境科学研究センター・教授)
研究分担者: 石橋 弘志(愛媛大学 沿岸環境科学研究センター・グローバルCOE准教授)
鈴木 賢一(愛媛大学 沿岸環境科学研究センター・グローバルCOE助教)
能勢 眞人(愛媛大学 プロテオ医学研究センター・教授)
研究期間: 平成21年 -平成25年

研究の背景・目的

 野生生物の個体数減少や大量死・奇形発生の原因として、化学物質による環境汚染の影響が指摘されているが、多くの種について適切なリスク評価は依然として実施されていない。リスク評価が困難な理由として、化学物質に対する毒性発症の感受性に種差・系統差が存在することが挙げられる。この感受性差を説明する一要因として、細胞内受容体を起点とするシグナル伝達の差が挙げられる。しかしながら、細胞内受容体および異物代謝酵素の遺伝情報や機能は、現在までほとんどの場合、ヒトや齧歯類について明らかにされたのみで、野生生物を対象とした研究は欠落している。このような比較生物学的アプローチの欠如は、化学物質に対する感受性を規定する分子機構について解明することを困難にしている。
 本研究の全体構想は、化学物質による多様な生物の細胞内受容体-異物代謝酵素シグナル伝達系の撹乱を指標として、感受性の種差を規定する分子機構について解明することである。

研究の方法

  多様な生物種の細胞内受容体と異物代謝酵素の一種であるシトクロムP450(CYP)を対象に、高度化したアッセイ系の構築と化学物質に対する反応の網羅的解析を試みる。具体的には以下の4つのサブテーマに取り組む予定である。

A)細胞内受容体と相互作用する化学物質の網羅的解析
B)CYP依存的な化学物質の代謝経路および代謝物の網羅的解析
C)細胞内受容体およびCYPに内在する感受性規定因子の解明
D)細胞内受容体およびCYP以外の感受性規定因子の探索

期待される成果と意義

  生物種特異的なリスクについて評価するためには、毒性に関与する遺伝子産物の情報や機能を系統学・生態学的に重要な生物種間で比較検討することが不可欠であるが、そうした研究は国内外を問わずほとんど存在しない。本申請は、化学物質に対する感受性差を、野生生物を含む多様な生物種の細胞内受容体のリガンドプロファイルやCYPの基質特異性・代謝能から評価しようとする点で独創的である。本研究の最大の意義は、野生生物の組織を使わなくても、その遺伝子さえ入手できれば、将来的には化学物質の有害性やリスクの評価が可能になる点である。また本成果は、低分子物質認識に関する細胞内シグナル伝達機構の分子進化プロセスを解明するための基礎的知見にもなるであろう。さらに本研究で確立される方法は、化学物質の生態影響試験を標準化・高度化するためのモデルケースになると期待できる。